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夕焼けに染まる教室でキスをした事を思い出した

席を立ち、廊下に出る。
「どうしたんだ?」
「先輩、思い出しました?」
「えっと・・・ごめん、まだ・・・」
「いいですよ。謝らなくて」

クスリと笑って話を続ける。
「それより、今日の放課後の部活は?」
「3年生は受験体制に入るからそろそろ引退だよ 」
「そうなんですか 」
「放課後、何かあるのか?」

返事をしながらドキンとした。
昨日、夕焼けに染まる教室でキスをした事を思い出したのだ。
俺の顔、赤くなってないかな。
・・・・なってるだろうな・・・・。
「先輩、顔赤いですよ?」 正臣の白くてきれいな手が伸びてきた。
とっさに後ろに頭をずらし、 「だ、大丈夫だよ。何でもない!で、何だって?」
「いえ・・もし暇ならうちに来てもらえないかな、って思って」
出しかけた手を引っ込めながら、またしてもクスクスッと笑われた。

どうも正臣の動作は女の子っぽくてドキドキする。
決してオカマっぽいとかではなく、何と言うか、動きがすごく柔らかいのだ。
おっとりしてると言ったほうが分かりやすいだろうか。
緩慢で滑らかな動きをする指先に目線が走る。
細くて長いキレイな指をウットリと見つめていた。

「・・・ぱい?先輩?」
「・・・・!あ、な、なに?」
「聞いてました?放課後校門で待ってますって言ったのに 」
「あ、や、その・・・分かった。HR、終わったら・・・すぐ、行くよ」
「約束ですよ」
「あ、うん、そう、約束、する 」
まるで日本語の不自由な外国人のようなたどたどしさで返事をする俺。
後輩相手に何をうろたえているのか自分でも分からない。
ただ正臣を目の前にすると、何故だか段々落ち着きがなくなっていく。
「それじゃ後で」
「あ、うん。後でな・・・」
正臣の後姿を見送った俺は、一人とぼとぼと教室に入った。
ガヤガヤと騒ぐクラスメイトの合間をぬって、一番後ろに着席する。
座ってから 「よく考えたら俺と正臣は男同士だ。なのに何故イヤじゃないんだろ?」 等とボンヤリ考えていた。
きっと正臣の容姿が女の子っぽいせいだ。
正臣はその動きだけでなく、身体も小柄で顔もほっそりとしている。
化粧をして女装をしたらきっとバッチリ似合うはずだ。
色んなことを考えているとすぐに放課後はやってきた。
あれ?昼飯食ったっけ? どうも最近記憶が曖昧で困る。
疲れているのか寝不足なのか・・・受験を間近に控え、 目に見えないプレッシャーが確実に3年生たちを圧迫しつつあった。
ストレスのせいで物覚えが悪くなる。
至極当然のことのように思えたが、受験生の記憶力が落ちるなんて致命的だ。
「うっかり恋愛もできないな そうポツリと呟いた後、俺は正臣の待つ校門に急いだ。

タグ: 体験談 ゲイ 高校生

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